「剣魂45号」 平成11年度・・・「自己を磨く」     

2013年07月29日 22:35

「自己を磨く」

剣道は対人競技であるために、勝者と敗者がはっきりわかれる。二者択一であることは誰もが敗者よりも勝者を目指そうと、次回を期すための稽古をくりかえすことになっていく。若いときは、負けたことをどのように分析してみても相手よりすべてが劣っているのだという現実だけがおおいかぶさってきやすいものだ。悔しくて、ただただ相手に対し、敵対心を強く持つようになっていく。時には敵対心を通り越して、憎しみさえも抱くことが生じてくる。
 ところがある時期、それは方向は間違っているのではないかという疑問に変化してくる。ひょっとして、相手に負けたのではなく、自分に負けてしまっているからではないのか。自分に負けるべき原因があったからではないのか。
 相手に負けることは、とても悔しく情けないことには違いないが、自分に負けることはもっとみじめで、不甲斐なく、前者の比ではない。そこから自己との戦い、自己の変革、自己磨くための稽古と日常生活が再スタートするようになっていく。
 自分の弱点を指摘してくれた相手に感謝する気持ちが生じ、自分の未熟さ、あるいは気持ちの弱さと強引さを素直に反省し、次回を期すさらなる稽古が始まっていくのである。
 相手がどうであれ、誰であっても、自分を精一杯表現したい。強い自分の存在を出し切ってみたい。そんな欲求を再確認しながら、次の立ち会いに向かっていく。