「剣魂46号」 平成12年度・・・「緊張の一瞬」

2013年08月04日 08:55

「剣魂46号」 平成12年度・・・「緊張の一瞬」

 

我々の生活の場面では、いろんな形で緊張の一瞬が生じてくる。それは試験を受ける時であったり、人前で話をする機会にしてもそうである。また好意を抱く異性との会話。さらには、昇段審査とか試合前の時間は特に緊張する。多くの人はそんな時、失敗したらどうしようか。笑われるのではないか。嫌われるような言動を見せたくない。などいわゆる疑心暗鬼の不安要素ばかりに支配されてしまう。
 そのことが結果的にマイナスに傾いていく傾向があることを知りながらも。
 剣道ではそんな時、昔から修行の指針として、「不動心」 「平常心」 という言葉がある。

 他のことによって動かされないこと
 いつもと変わらない

 そんな心境を身に付けるように修練を続けなさい。という訓えである。
 人間は感受性が強ければ強いほど、恐さを覚えたり疑いが生じたり、感情の豊かさに支配されるのが常である。そんな中、自己の感情を自分自身でコントロールすることが如何に難しいことであるかお思い知らされる。
 だからこそ、物事に左右されない確固たる信念を持ち、不動の心を養成するべく剣道の修行に邁進することが、泰然自若の姿を形成してくれるのであろう。
 体得するための導入としては、ちょっとした心がけを持つことでそのきっかけをつくることができる。
 打たれることを恐がらないこと。どうぞ好きにして下さい。「サア来い!」と開き直った気持ちで一歩間合いを詰める。自分をさらけ出して攻め入る稽古を心掛けることである。
 緊張する一瞬に遭遇したとき、いかにも平然と、何事もなかったように振る舞う言動をみると、その人の修練の奥深さを垣間見るようで感動を覚える。
 緊張の一瞬こそ、自己の修練の度合を知ることができる大切な瞬間といえる。