剣魂49号 平成16年 「大森玄伯先生」を偲ぶ会

2013年08月04日 09:06

剣魂49号 平成16年 「大森玄伯先生」を偲ぶ会

 

 2月14日に、生前大森先生が贔屓にしておられた「おい川別館」において、80歳代から30歳代まで交流を持っていただいた70名余りの剣士が一堂に会し、表題の会が催された。
 会場には等身大の遺影が飾られており、今にもオッ・オッ・オッと先生の笑い声が聞こえてくるのではないかと錯覚を起こす雰囲気が溢れており、自然に背筋が伸びている自分を感じながらも、和気あいあいとした楽しいひと時を過ごすことが出来た。
 先生が「拙守求真」を生涯座右の銘とされたことは、広く伝えられている。この言葉には、自分の短所(拙さ)を素直に認める(守る)度量の広さが伺え、さらにその短所を克服していく意思の強さ(求真)が読み取れる。まさに先生の生き様そのものであり生前の先生の人柄を言い表す最も適切な箴言であったと敬服の至りである。
 翻って考えてみると、人間は誰しも自分の未熟さを認めたくないし、他人に察知されたくないという防衛規制が働くのが常である。剣道においても弱点を見抜かれているのではないか、自分の方が弱いのではないかなど、不安感を覚える心情は、全て自己の拙さを押し隠そうとする意識から生じてくるものだと考えることができる。ここからは”捨てきった”納得のいく会心の打突が生まれることは決してない。まして自分の弱点(打たれた時・所)を相手に指摘してもらえるのが剣道の素晴らしさである、との意識がなされていれば、短所・弱点・拙さ・不安・未熟さなどいずれも覆い隠すことなく、さらけ出す剣道でありたいと考えが行き着くことになる。
 打たれることを怖がらず、負けることを恐れず、弱点を包み隠すことなく、自分の全てをさらけ出して創造していく剣風こそ、威風堂々とした風格が身につく「王者の剣」への近道なのかもしれない。
 これからも、大森先生の後ろ姿を追い求めながら、自己剣風の確立に励む覚悟を再認識させられたひと時であった。