剣魂53号 平成19年度・・・「変容の原点」
2013年08月04日 09:21
剣魂53号 平成19年度・・・「変容の原点」
平成19年10月28日、東京日本武道館で行われた禅日本学生剣道優勝大会において、国士舘大学剣道部は12年ぶり12回目の見事な逆転優勝を果たした。
OBの一人として、その瞬間を目の当りにし、心から喜びの拍手を送りながら、熱くなる身体で感動に浸りつつ、どこか冷静に四十余年前の残像を捜し求めていた自分がいた。
というのも、本年度から広島大学剣道部の皆さんにご縁を頂き、この大会にも中・四国代表として監督という立場で、私自身久し振りに出場する機会を得ることができた訳である。
成績は、7名の選手が専修大学に対して一本も奪うことが出来ずに、3対0で敗退した。
私が大学に入学した頃は、当然全国大会で一本を奪えるだけの実力など持ち合わせているはずがない。しかし紛れもなく4年生の時には、日本一の栄誉を与えていただいた。何故このような変容をとげることが出来たのであろうか。
このことを整理することが、これからの広島大学剣道部に関わっていく中で、生かされてくるのではなかろうか。そんな想いが瞬時に交錯しながら、残像を探し求めていたのである。
その中の一つを紹介しよう。
初めて学生剣道に触れた時の強烈な印象は「剣先が鋭い」ということであった。剣先に威力を感じたし(どこから、いつ、どんな打突が繰り出されてくるのか解らない怖さと不安)、どちらから攻撃を仕掛けていっても、竹刀がえらく邪魔になり、飛び込んでいくことさえ躊躇せざるをえない。それでいて平然とした表情と泰然とした構えにカルチャーショックを覚えたものである。先生方は無論のことであるが、数多いどの先輩にお願いしても違うことがないのが、国士舘大学の良き伝統であっただろうと、今にして思えるのであるが・・・。
このことで考えたことは二点。
その一つは、如何にして突破る爆発力をつけるか。さらに大切な二点目は、自分自身が中心を崩さない気構えと竹刀構えの構築をどのようにしていくかである。その方法は試行錯誤の連続であったように思うが、4年間のみならず、現在まで継続した課題となっている。つい試合になると、勝ちたい打ちたいが為に、気持があるいは構えが崩れながらでも早く打とうとなりがちである。
自分十分の状態であるからこそ有効打突となり得るのであって、決して崩れながらの打ち急いだ打突からは、会心の一撃は生まれない。
気持ちを構えを崩すことなく真正面から相手に立ち向かっていく自己の創造を、日々の稽古で持ち続ける姿勢こそが、変容の原点かもしれないと感じている。